大判例

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札幌簡易裁判所 昭和62年(ニ)4号 判決

(抄録)

「二 訴状等の送達について

請求原因2一(1)の事実は当事者間に争いがない。右事実によれば、Xに対する訴状等の送達が不在でできなかったので、裁判所がYに就業場所の照会をしたところ、YはXの就業場所を知りながら、「就業先不明」と虚偽の回答をしたため、裁判所がX宛訴状等を郵便に付して送達したことが認められる。

民事訴訟法一七二条によると、名宛人の住居所に対する郵便に付する送達が許されるのは住居所に対する送達ができなかった場合で、就業場所が判明しているときは、その送達が不奏功の場合か、就業場所が不明の場合に限られる。そして就業場所が不明の場合に住居所に対して郵便に付する送達をするためには、郵便に付する送達が名宛人に到達したか否かを問わず、発送時に送達されたとみなされるため、就業場所の有無についての判断は慎重になす必要があり、郵便に付する送達を申請する者から裁判所に対して、就業場所が不明なことにつき積極的認定資料を提出されることを要するものと解される。

前訴訟においてYは就業場所不明につき積極的認定資料を提出するどころか、就業場所を知りながら「就業先不明」と虚偽の回答をしたもので、これに基づく裁判所の郵便に付する送達は、郵便に付する送達ができないのにしたものであるから違法であり、送達は無効といわざるをえない。Xに対する訴状等の送達が無効である以上、Xは前訴訟において、本人又は代理人を口頭弁論期日に出席させることができなかったものであり、代理権の欠缺といえるから、民事訴訟法四二〇条一項三号の再審事由があるというべきである。

三 原判決の送達について

Xの妻で、同居していたAがX宛の原判決正本を受け取ったことは当事者間に争いがない。

Xは、民事訴訟法一七一条一項において、同居人に受領権限が認められるのは、送達にかかる事件について送達を受けるべき本人と同居人との間に利害の対立がないか、あるいは同居人がそれについて何らの利害関係を有しない場合に限られるものと解すべきであり、前訴訟において、AはXの氏名印章を冒用して契約をしたもので、Xに氏名冒用の事実が発覚するのを恐れて原判決正本を故意に隠匿したものであるから、AとXとは利害が相反し、対立関係にある。したがってAには同居人として原判決正本を受領する権限はなく、代理権のない者に対する送達は効力がなく、代理権の欠缺として民事訴訟法四二〇条一項三号の再審事由がある旨主張する。

同居人について補充送達の受領権限が否定されるのは、同居人が送達の名宛人にとって訴訟の相手方である場合に限られ、単に事件につき事実上の利害関係を有するにすぎない場合は、その利害が送達の名宛人と対立する場合でも送達受領権限は否定されないと解するのが相当である。けだし事実上の利害関係の如きその事情の存否が明らかでないのに、右事情によって送達の効力が左右されるとすると、手続の安定を欠くことになるからである。

Xの主張事実のとおり、同居人である妻が、Xの名義を冒用して立替払契約をし、その事実の発覚を恐れ、原判決正本を隠匿した事実を前提としても、右事実は事実上の利害関係を有するにすぎないから、原判決正本が同居人で、妻であるAが原判決正本を受領している以上、原判決正本はXに有効に送達されたと解すべきである。

したがって、原判決正本の送達の無効を前提として、代理権の欠缺を理由に民事訴訟法四二〇条一項三号の再審事由がある旨のXの主張は理由がない。

四 訴状等の送達の瑕疵は民事訴訟法四二〇条一項三号の再審事由であるが、原判決正本はXに有効に送達されているのであるから、右再審事由も含めて不服があれば上訴によってなすべきである。

訴状等の送達の無効に基づく民事訴訟法四二〇条一項三号の再審事由は原判決送達時に知っていたものと解すべきであるから、原判決に対し上訴しない以上、再審事由を知りながら上訴によって主張しなかった場合に該当するので、民事訴訟法四二〇条一項但書後段により再審事由を主張しえないことに帰する。

なお、Xは前訴訟で期日指定の申立てをしたところ、原判決が存在するという理由で却下され、また本件において再審事由がないとして却下されるなら、Xの裁判を受ける権利を顧慮されなくなる旨主張するが、X主張のとおりAが原判決正本を隠匿したとするなら、その事由を知ったときから一週間以内に上訴の追完(民事訴訟法一五九条)をなしえたし、また、民事訴訟法四二〇条一項五号の再審事由もあったのであるから、しかるべき救済方法をとれたはずである。」

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